植村氏が受けた被害 法廷で明かされた真実
これが植村バッシングの全容だ
植村氏本人と家族および、就職が内定していた神戸松蔭女子学院大学、非常勤講師を務めていた北星学園大学に送りつけられた脅迫中傷メールは、週刊文春の記事に触発されて発せられた。東京訴訟で提出された原告第4準備書面は、膨大な量のメールを時系列で詳細に分析し、因果関係を明らかにしている。植村バッシングの全容は、この書面で明かされた。
第4準備書面 原文PDF
東京訴訟原告第4準備書面(2016年7月20日付、全70ページ)の内容構成は次の通り。
▽第1 はじめに
▽第2 植村バッシングン関する経緯
1再就職への経緯、2週刊文春の取材と記事の掲載、3インターネット上の攻撃の拡散、4神戸松蔭女子学院大学への激しい攻撃、5神戸松蔭女子学院大学との雇用関係を終了するに至る経緯、6非常勤講師を務める北星学園大学に対する攻撃
▽第3 本件不法行為の重大性と損害の因果関係
1はじめに、2文春記事Aと原告の被害、3文春記事Bと原告の被害、4被告文春のこれまでの名誉毀損行為とその被害、5結論
▽第4 本件準備書面のまとめ
1原告の平穏な生活の侵害、2被告文藝春秋の行為の違法性、3被告文藝春秋の行為との因果関係、4原告の受けた被害、5結論
以下に全文を収録する。(書式は変えてあります)
第1 はじめに
まずは、甲11号証をご覧いただきたい。これは、原告の娘の写真をインターネットに公開し、「詐欺師の祖母、反日韓国人の母親、反日捏造工作員の父親に育てられた超反日サラブレッド」等と罵るものである。原告による本件記事が公開された91年当時生まれてもいなかった原告の娘に対してまで攻撃が及ぶ点に、植村バッシングの異常さがある(甲12号証も併せて参照頂きたい)。
甲75もご覧いただきたい。当時原告が非常勤講師として勤めていた北星学園大学に送られた脅迫状である。ここにも「植村●●(引用者注・娘の実名)をコロス」とある。さらに醜悪なのは、原告代理人の事務所に送られたファックスの一部(甲76)である。原告の娘さんの写真のキャプションに「売春婦問題」とあり、一緒に別の女性のヌード写真が送られている。これは原告代理人の業務を妨害することにより、「原告の弁護をすればお前の娘も被害に遭うぞ」という意味の脅迫であり、原告が弁護士からの弁護を受けることを妨害する意図であることは明白である。驚くべきことに、同一のファックスは、原告の娘の通う高校にも送られたというのである。
このような家族に対する攻撃、さらに職場に対する抗議(嫌がらせのメールやファックス、ネットの書き込みの数々、これらを総称して「植村バッシング」と呼ぶ)は、原告が日本社会で生存することすら困難にした。原告は、2016年3月より、自宅のある札幌を離れて、韓国ソウルのカトリック大学で教鞭をとることとなった。
原告が91年に執筆した新聞記事が意図的に事実を捻じ曲げたものではないこと、被告らが主張する「批判の前提事実」は一つもないことは、すでに原告第3準備書面で明らかにされた。全く事実に基づかないことで謂れなき非難を受け、住み慣れた地で生存することすら不可能になる。ここまでの理不尽・不条理は他に類例をみない。
しかるに、このような卑劣なバッシングに対する被告文藝春秋の対応は、「朝日新聞よ、被害者ぶるのはお止めなさい~“OB記者脅迫”を錦の御旗にする姑息」(甲35)という、2014年10月23日付け週刊文春の記事のタイトルに端的にあらわれている。被告文藝春秋は、原告とその家族の受けた被害を嘲笑い、さらなるバッシングを扇動しているのである。このような被告らの対応こそ、原告が裁判に訴えざるを得なかった直接の動機である。
本書面において、原告は、原告が被った具体的被害を改めて詳細に述べる。そして、原告は、一連の「植村バッシング」が、被告ら、とりわけ被告文藝春秋の行為(文春記事A及びB)に起因していることを論証し、さらに、被告文藝春秋はそのような害悪を積極的に発生させようとする「害意」があったことを明らかにすることで、被告らの責任の重大性を改めて明らかにする。
第2 本件バッシングに関する経緯
1 再就職への経緯
原告は2009年、北海道支社に異動となり、2012年4月からは、札幌の北星学園大学において非常勤講師を務め、韓国・中国・台湾などからの留学生に対し、日本の事情等を教える講義を行っていた。
原告は、学生らとともに学ぶ喜びを実感し、大学教員への転職を熱望するようになり、人生の後半を、研究と教育に費やす覚悟を決めた。
2013年夏頃、神戸市にある神戸松蔭女子学院大学は、マスメディア論・文章論などを教える専任教員を公募しており、対象者の資格として記者経験があることが求められていた。
原告は、朝日新聞函館支局長を務めている自身にうってつけと考え、神戸松蔭女子学院大学の教員募集に応募したところ、2013年12月に採用が決定し、雇用契約も取り交わした。原告は、2014年4月から行う予定の講義計画を大学側に送付するとともに、神戸への引っ越しの準備も進め、新しい目標にむかって第一歩を踏み出そうとしていた。
2 週刊文春の取材と記事の掲載
(1)週刊文春の取材
週刊文春の記者は、同年1月27日、神戸松蔭女子学院大学に対し、原告に関する取材を求めた。大学側が、メールにて質問をするよう求めたことから、メールに質問状が送付されたが、当該メールには、原告の職位や担当する講座を尋ねるのみならず、「植村記者を採用された理由をお教えください」との質問をするとともに、メールにおいて「植村記者は、いわゆる従軍慰安婦問題について、1991年8月11日付朝日新聞で『元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く』との見出しで強請(ママ)連行の事実を証言する元慰安婦が現れたとの趣旨の記事を書き、現在にいたるまで日韓のあいだで大きな紛争となっている、いわゆる従軍慰安婦の問題に先鞭をつけましたが、この記事をめぐっては現在までにさまざまな研究者やメディアによって重大な誤り、あるいは意図的な捏造があり、日本の国際イメージを大きく損なったとの指摘が重ねて提起されています。貴大学は採用にあたってこのような事情を考慮されたのでしょうか。この点につきましても、ぜひご教授(ママ)くださいますようお願い申し上げます。以上、お忙しいところ誠に恐縮ですが、明日28日(火)の正午までにご回答賜りますよう重ねてお願い申し上げます」との記載をしたうえで、「植村記者を採用された理由をお教えください」との質問がなされていた(乙9)。
(2)本件記事の掲載
被告文藝春秋の発行する週刊文春は、2014年2月6日号(同年1月30日発行)において、「“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」と題した記事を掲載した。その内容は、原告が神戸松蔭女子学院の教授に就任することを問題視し、その根拠として被告西岡による原告を批判するコメントを紹介している。(本件西岡発言及び文春記事A)。
3 インターネット上の攻撃の拡散
(1)ブログでの大学攻撃の扇動
週刊文春による本件記事Aは、瞬く間にインターネット上に拡散し、神戸松蔭女子学院大学への攻撃が行われるようになった。
本件記事Aが掲載された週刊文春が発行された同年1月30日には、「朝日新聞・植村隆氏を国会喚問せよ!大学で、捏造慰安婦を教えるかも【超拡散】」とのブログ記事において、週刊文春の本件記事(文春記事A)の記載内容をもとに、原告が神戸松蔭女子学院大学に就職すること、同大学の電話番号、ファックス番号が記載された(甲77)。そして、同ブログのコメント欄には、「本日、神戸松蔭女子学院大学の方に電凸してみました。結果として今年4月からの植村隆の教授就任は事実だそうです。ネットでは今も全く騒ぎになっていません。なんとか問題提起したいのですが・・・・・・」との投稿や、「週刊文春、読みました。いま、私立大学はとても評判を気にします。問い合わせをすれば、必ず返事を頂けるはず。メールしてみます。皆さんの声が大きければ、採用取り消し、ということになるかも・・・・・・楽観的すぎるかな?」との投稿、「声が多くなればひょっとしたら採用取り消しもあり得るかもと思います」との投稿などがなされていた。
ちなみに「電凸」(でんとつ)とは、実用日本語表現辞典によれば、「インターネットスラングで、対応に疑問や不満のある企業・団体に対して一般消費者の立場で電話をかけ、直接に企業としての見解や立場、対応などを問うことを指す表現。電話での突撃取材、といった意味合いの略語。」である。
同年2月2日付の別のブログでは、「絶対無理!植村隆が神戸松蔭女子学院大学の教授だって!おそらく一回も登校できずに行方不明になる」という見出しがつけられ、本文中では、「植村隆の『犯罪』によって、どれだけ多くの国費が使われ、どれだけ多くの日本国民への侮辱を招いたか!」「まあ、明日から、神戸松蔭女子学院大学の電話が鳴り続けることだけは間違いありません」「学生だって、こんな売国奴に来られたら困るでしょう」などと記載するとともに、こちらでも同大学の電話番号や問い合わせメール書き込み用のアドレスが記載されていた。同ブログのコメント欄には、「採用取り消しまで抗議の電話やメールを出しましょう。」との書き込みがなされていた(甲78)
このように、週刊文春の本件記事Aの掲載後から、原告を辞職に追い込もうとする書き込みがインターネット上に蔓延することとなった。
(2)インターネットテレビ「チャンネル桜」での攻撃
同年2月3日には、インターネットテレビ「チャンネル桜」にジャーナリストの大高未貴氏が登場し、「逃げるな!朝日新聞・植村隆記者よ」という番組が放映された(甲79)。週刊文春の記者は、本件記事Aの掲載にあたって、原告の所属する朝日新聞函館支局に取材を行っていたところ、大高氏は、同取材に同行していた。
大高氏は、同番組において、原告のことを「元祖従軍慰安婦捏造記者」と紹介したうえで、「そんな中で、植村記者は、早期退職をして、神戸のお嬢様大学、松蔭女子学院大学の教授になるということで、これだったらほんとうに最後ですね。取材しようと思って、函館支局に行ったわけです。」(甲80 動画2:18)。と述べるとともに、原告を批判する発言に終始した。その後、「チャンネル桜」のホームページには、原告に対する非難の書き込みがされるようになった。
4 神戸松蔭女子学院大学への激しい攻撃
以上のとおり、本件記事Aの公表に呼応して、インターネット上において神戸松陰女子学院大学への抗議が呼びかけられた。これにより、同大学に対して、電話、ファックス及びメールを使った抗議運動が始まり、週刊文春の記事が出されてから面談の実施された同年2月5日までの間に、神戸松蔭女子学院大学に対してなされたファックス及びメールの件数は247件にも及んだ。
このような抗議ファックスや抗議メールに共通してみられるのは、❶文春の記事を引用していること、❷当該記事から、原告が「でっち上げ」その他、社会的に批判に値する反社会的行為をしたと考えていること、❸その反社会的行為ゆえに原告の教授就任に強く反対し、原告を受け入れる大学にも攻撃を向けていること、である。その一部を以下において記載し、その内容を検討する(甲81)。
記
①1月31日午後3時18分ファックス(甲81の239)
「週刊文春の記事で朝日新聞の植松(ママ)隆が貴大学の教授に就任することを知ってがっかりしております。(中略)一受験生の母としても非常に残念です。この一件が解決しない限り、貴大学への娘の受験は決してありません。」
②1月31日午後11時45分メール(甲81の8)
「週刊文春で朝日新聞・植村隆氏が神戸松蔭女子学院大学に就職されるということを知り驚きました。あのような日本人にあるまじき人間をわざわざ公募で採用されるほど人材不足なのでしょうか。植村隆氏曰く『ライフワークである日韓関係や、慰安婦問題に取り組みたい』など、お若い女子学生に間違った歴史観など植え付けられたら取り返しがつきません。神戸松蔭女子学院大学の名を汚します。今からでも遅くありませんので、どうか採用を見合されますことを節に希望いたします。」
③2月1日午前9時44分メール(甲81の9)
「植村隆記(ママ)という人が教授になると、『週刊文春』にありました。この記事にもありますが、この方は自らのねつ造記事に関して何の責任も取っていません。このねつ造のために、損ねた国益を考えると国賊と言われるのが当然の人間です。貴校の学生が『文春』を読むかどうかは不明ですが、インターネットでも彼のねつ造に関して詳細に書かれています。経緯の説明もあり、彼がねつ造をしたことは事実です。この人はまだ純真な学生に自らのねつ造を刷り込む気のようです。大学側としてこのような人を採用する意図は何ですか?ねつ造を女子学生に刷り込む手伝いをしたいのですか?以前からこの人の名前はねつ造制作者として有名です。知らなかったとは思えません。女子学生に韓国の嘘プロパガンダを教える授業をするために採用したとしか思えません。女子学生のために抗議します。子供たちを韓国のプロパガンダに利用するという卑劣な行為は止めてください。このような学校として全国から認識されますよ。」
以上の3つの記事は、いずれも、上記❶❷❸の要素を持っている。②は、原告について「日本人にあるまじき人間」と評し、③は「この方は自らのねつ造記事に関して何の責任も取っていません。このねつ造のために、損ねた国益を考えると国賊と言われるのが当然の人間」「経緯の説明もあり、ねつ造をしたことは事実です」とあり、原告が行った「ねつ造」という行為が社会的に極めて厳しい非難に晒されるべき反社会的行為であると認識されていることが分かる。また、③では、「このような学校として全国から認識されますよ」とあり、原告を受け入れれば攻撃は大学に向くであろうと述べている。このような「大学に対する脅迫」は大学側を震撼させることになる。
④2月1日午後1時40分メール(甲81の10)
「二点に絞つてお尋ねします。貴学はこの春から、朝日新聞記者・植村隆氏を教授として迎へられるといふ週刊誌報道がありましたが、それは事実でせうか。植村氏はかつて朝日新聞京城支局にあつて、元慰安婦を煽動して日本国への賠償請求を焚き付け(自分の姑が原告団団長!)、半島慰安婦の『強制連行』説を吹聴し、今日に続く所謂『従軍慰安婦』問題の禍根を捏造した人物の一人です。いはば彼は証明書付き、正真正銘の『国賊』『売国奴』です。そんな人物と承知の上でなほ、貴学はあへて彼を招聘するのでせうか。いつたい彼に学生を教育するやうな資格があるのでせうか。いくら私学とは言へ、ひどすぎませんか。良識ある多数国民に疎まれてまでするその存念とは一体何なのか、お聞かせ頂けませんか。」
④から、文春記事のいう「ねつ造」が単なる「論評」の類ではなく、同記事を一般人が読めば、原告が「半島慰安婦の『強制連行』説を吹聴し」た「正真正銘の『国賊』『売国奴』で」あるとの認識を抱く内容であることが分かる。
⑤2月1日午後6時45分メール(甲81の13)
「●●卒業生です。
http://App.f.m-cocolog.jp/t/typecAst/1193342/1213673/92738408
こういう記事を見つけました。私は卒業生として大反対します。周りの受験生をもつお子さんにも松蔭女子大は勧めません。寄付ももちろんしません。どうかこんな売国奴を教授にするのはやめていただきたいと思っております。受験される学生さんも減少するのではないですか?」
⑤は大学への攻撃を仄めかす抗議の典型である。「寄付もしません」「受験生が減少する」といった類の言葉は私立大学の経営基盤を揺るがすという脅しであり、少子化で生き残り競争が激しさを増す私立大学がこの種の脅迫に最も弱いことを知り尽くした上での発言である。
⑥2月2日午前11時21分メール(甲81の26)
「2014、2,6週刊文春から↓
タイトル、「慰安婦捏造、朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」
『記者だったら、自分が書いた記事くらいきちんと説明してもらえませんか』
小誌記者の呼びかけに、その男(植村氏)は50過ぎとは思えないほどの勢いで猛然と走りだし、タクシーに乗って逃げた。
いわゆる従軍慰安婦問題を最初に報じた朝日新聞の記者が見せた姿だ。
その記事が載ったのは、1991年8月12日。朝日は当時、大阪本社社会部にいた植村隆記者の署名で
<女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮従軍慰安婦」のうち、1人がソウル市内に生存している事がわかった>(大阪本社版)
とする記事を掲載した。
これをきっかけに朝日は慰安婦問題を次々と取り上げ、元陸軍軍人(吉田清治)「済州島から慰安婦を拉致して戦場に送りこんだ」などの証言を根拠に、日本軍による「強制連行」があったとの主張を大々的に展開していく。
(以下略)
⑥はその大部分が本件記事Aの引用であり、その影響力の大きさがよくわかる。
⑦2月2日午後6時48分(甲81の38)
「こんな日本を貶める奴を教授にするとは、呆れた学校だ。特亜の学校か。潰れてしまえ。どうしょうもない学校だ。PRをドンドンしよう。
記事
日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるのだという。〈大学で研究活動に入る前に自らの誤報について検証すべきではないか〉〈『記者だったら、自分が書いた記事ぐらいきちんと説明してもらえませんか』小誌記者の呼びかけに、その男は五初?ぎとは思えないほどの勢いで猛然と走り出し、タクシーに乗って逃げた〉という。
こんな記者が、女子大でいったい何を教えることやら。
⑧2月2日午後7時16分(甲81の39)
「●●の卒業生です。『従軍慰安婦捏造の張本人、植松(ママ)隆記者が今年3月で朝日新聞を早期退職、神戸松蔭女子学院大学に就職する』という週刊誌の記事は事実でしょうか?卒業生として、断固反対します。記事捏造の疑いがあるジャーナリストを採用するなんて信じられません。日本中から非難されること間違いありません。(もうすでに非難されていますが)松蔭の卒業生として、今まで母校を誇りに思ってきましたが、記事が事実なら今後は母校を恥じるしかありません。名前はもちろん仮名です。本名を隠して抗議するのは、卑怯ですが、身の安全のため、やむを得ません。返答はいりません。」
⑨2月2日午後8時15分(甲81の51)
「『慰安婦捏造』朝日新聞の植村隆記者が今年3月で早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授に
http://www.hoshusokuhou.com/Archives/36102377.html
日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた、元朝日新聞の植村隆記者が貴校にて教授職に就くとの報道を見知りました。問題ではないでしょうか。反日記者として吊るし上げられ、国会での証人喚問も取り沙汰されている存在です。少なからず、イメージダウンへ繋がると考えます。再考いただきた(ママ)方が宜しいかと考えお伝えいたします。」
⑩2月2日午後8時51分(甲81の58)
「私は関西在住の者ですが、2月6日の週刊文春の記事について本当に憂慮しております。記事によると、捏造である従軍慰安婦記事を最初に報道し、しかもその記事が捏造であったことが判明した後も全く謝罪訂正をもしていないその当の本人である植村隆氏が朝日新聞を早期退職をし、貴学院の教授に再就職するとのこと。これが事実なら到底受け入れてはいけないことであります。昨今の中国、韓国による日本侮辱プロパガンダの発端が植村記者の捏造慰安婦記事であり、今や韓国のジャパンディスカウントは全世界に拡販しています。どれほどの国益を損じさせたか?またどれほどの日本人のイメージを貶めたか?計り知れません。その張本人を雇用することは貴学院の恥となります。是非再考を進言します。」
⑪2月2日午後10時3分メール(甲81の76)
「「『慰安婦捏造』朝日新聞の植村隆記者が今年3月で早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授に」と話題。大学でも嘘をつくのですか?御校の常識の無さにあきれる声が多数。この人は嘘つきで、今維新の会がやっている『朝日新聞を国会招致する署名』の元の記事を書いた人物。週刊文春や雑誌Willで詳細がわかります。またネットでも多くの国民が、日本を貶める元凶になったねつ造記事を書いた人物と指摘されています。こんな人に女子学生が何を教わるのですか?これを元に御校への批判の声が上がっています。また、このような学校へ行く学生への軽蔑も。もちろん学生に罪はないですが、この人に教わるのを嫌がらない学生なら、正直普通の人とは思えません。これでよいのですか?日本では『強制の慰安婦はねつ造』と言うのは有名です。特に関西ではテレビでも『朝日がねつ造した』と普通に言われています。この人は『強制連行された慰安婦の悲しい歴史』でも教えるのですか?嘘なのに?学校も以上ですよね。関西なので、誰かに聞かれたらこんな学校と説明しておきます。」
⑦~⑪も、❶文春記事を引用し、❷原告が反社会的行為をしたとの認識を示し、❸それゆえ、原告を雇用する大学への攻撃をしかける意図を示す点で共通している。とりわけ、⑦は、「呆れた学校だ。特亜の学校か。潰れてしまえ。どうしょうもない学校だ。PRをドンドンしよう。」、⑪は「関西なので、誰かに聞かれたらこんな学校と説明しておきます」等と大学への攻撃を煽り、⑨は「イメージダウンにつながる」、⑩は「貴学院の恥」等と大学を卑しめている。
⑫2月2日午後10時51分メール(甲81の81)
「突然ですが『週刊文春』(2月6日号)の記事について、気がかりな点をお知らせします。タイトルが『“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に』とうたって、『日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるのだという』『小誌記者の質問(略)呼びかけに、その男は50過ぎとは思えぬほどの勢いで猛然と走り出し、田井クシーに乗って逃げた。』と週刊誌に書かれています。このようなことが本当だとすれば、このような記者が貴大学でいったい何を教えることやら心配ですので、ご一報する次第です。ともかく慰安婦を強制連行したとの捏造記事を真っ先に掲載して今や国際問題にまで拡大させ、国の誇りを傷つけている現状はご承知の通りだと思います。」
⑬2月2日午後11時6分メール(甲81の83)
「(448)猛然と走って逃げた朝日新聞『慰安婦』記者
『日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるのだという。』いったい、何を教えるというのでしょうか。」
⑭2月2日午後11時16分メール(甲81の86)
「『週刊文春』(2月6日号)で日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた植村隆記者が、今年3月で朝日新聞社を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるとの記事がありますが、自分の記事の正当性を証明出来ない、このような人物を採用する事に疑問を抱きます。我が子を貴学院に入学させることはありません。」
⑮2月3日午前0時33分メール(甲81の95)
「このところ精力的に韓国批判を続けている『週刊文春』(2月6日号)は今週もワイド型式で『韓国の「暗部」を撃て!』。なかでも注目は『“慰安婦捏造(ねつぞう)”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に』。
日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるのだという。〈大学で研究活動に入る前に自らの誤報について検証すべきではないか〉〈『記者だったら、自分が書いた記事ぐらいきちんと説明してもらえませんか』小誌記者の呼びかけに、その男は五初?ぎとは思えないほどの勢いで猛然と走り出し、タクシーに乗って逃げた〉という。
こんな記者が、女子大でいったい何を教えることやら。
⑯2月3日午前11時21分メール(甲81の128)
「まず、以下の記事をお読みください。とてもショックを覚えました。
『慰安婦捏造、朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に』週刊文春」2014/2/6 『「記者だったら、自分が書いた記事ぐらいきちんと説明してもらえませんか」小誌記者の呼びかけに、その男(植村氏)は50過ぎとは思えないほどの勢いで猛然と走り出し、タクシーに乗って逃げた。いわゆる従軍慰安婦問題を最初に報じた朝日新聞の記者が見せた姿だ。』
(中略)
植村記者の妻は韓国人で、その母親●●ヤンスンニム・梁順任は慰安婦支援団体の幹部だったが、集まったお金を着服した詐距e疑者(ママ)です。昨今の日韓の関係悪化の大きな原因は、まさに植村氏の強制慰安婦問題です。世界を巻き込んで大きな事件へと発展しつつある種を蒔いたのが、朝日新聞の植村記者です。端的に垂?上げ(ママ)、売国奴とも言える植村氏を、どうして貴校の教授に迎えられたのか。若いナイーブな学生に虚偽の歴史を刷り込ませるわけにはいきません。是非、再度お考え直しのほどお願い申し上げます。」
⑰2月3日午後5時47分メールフォーム(甲81の155)
「前略、いつもお世話になっております。●●を卒業し、●●したものです。さて、このたび朝日新聞の植村記者採用に関する、産経新聞、週刊文春掲載記事の件で、全国から抗議のメールや電話等がたくさん来ているのではないかと推察しております。私も仕事で産経新聞社とかかわっておりますので、今回の件は心配しておりました。植村隆氏の教授採用になりますと、保守系の方はずっと継続して大学側の責任追及をされると思われます。この政治的に難しい時代になぜ、わざわざ捏造がはっきりしている植村氏を採用するのかよくわかりません。私は日本の国も愛しているからです。2チャンネルには母校の誹謗中傷の書き込みがいっぱいでした。このままでは母校の存続すら危ぶまれます。植村氏の受群慰安婦の捏造問題は、歴史的証明を産経新聞の調査によって明確にされていましたので、社会的な制裁が今後卵z(ママ)されます。若い学生さんへの影響もありますし、卒業した私もいろいろと言われる始末です。歴史ある神戸松蔭に誇りを持っていましたので、今回の植村氏の採用は本当に残念でなりません。中学時代からお世話になっている友人も残念がっておりました。私が数年前に在校していた時には、学生による大麻事件がマスメディアに報じられました。学校の格付けを考えますと、今回の件も加わり、かなり落ちると考えれます。どうか日本の国のためにも神戸松蔭の将来のためにも植村氏の採用を踏みとどまっていただくよう、ご一考くださいませ。よろしくお願いいたします。かしこ」
⑫~⑰も、❶文春記事を引用し、❷原告が反社会的行為をしたとの認識を示し、❸原告を雇用する大学への攻撃を意図する。⑰は、「保守系の方はずっと継続して大学側の責任追及をされると思われます」「母校の存続すら危ぶまれます」「社会的な制裁が今後予想(?)」「学校の格付けを考えますと、今回の件も加わり、かなり落ちると考えれます。」等と大学を脅迫している。
⑱2月4日午前11時40分メール(甲81の189)
「〔植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授に〕という、週刊文春の記事がありました。週刊誌報道ですから、俄に信じることはできませんでしたので、お尋ね致します。この報道は事実ででしょうか(ママ)。植村隆記者については、所謂『従軍慰安婦』捏造記事の張本人であると、批判の対象となっております。この様な人物が、子女の教育機関として絵本等に相応しいものか疑問に思っております。もし事実であれば、貴校の見解をお尋ねしたいと思います。」
⑲2月4日午後9時4分メール(甲81の209)
「お忙しい中垂?訳(ママ)ありませんが、貴大学の教授採用に関して気になることがありますので、質問させて頂きます。もしも質問先窓口が違っておりましたら、恐縮ですが担当者の方に転送して頂ければ助かります。
本題でありますが、週刊文春の記事『“慰安婦捏造(ねつぞう)”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に』を読みました。この人物は、朝日新聞において『従軍慰安婦』に関するねつ造記事を書き、日本の国益を大きく損ね、アジアにおける日本の立場を今に至るまで難しいものにしている、そもそもの元凶です。このような人物を、韓国の大学ならまだしも、歴とした日本の大学が教授として迎えることに、私は心底驚きを禁じ得ません。このような反日思想の、戦前戦中の言い方をすれば『売国』思想の人物を教授として迎えるということは、貴大学においては親韓反日的な教育を容認していると言うことでしょうか?(以下、略)」
⑲も、文春記事Aが、一般読者をして、原告が「朝日新聞において『従軍慰安婦』に関するねつ造記事を書き、日本の国益を大きく損ね、アジアにおける日本の立場を今に至るまで難しいものにしている、そもそもの元凶」であるとの印象を与えるものであることを示しており、一般読者は、「このような人物を、韓国の大学ならまだしも、歴とした日本の大学が教授として迎えることに」「心底驚きを禁じ得」ないのである。文春記事Aを読んだ読者は、原告を「反日思想」の、「『売国』思想の人物」と認識し、原告「を教授として迎えるということは、貴大学においては親韓反日的な教育を容認していると言うこと」かとの疑問を抱くのである。
⑳2月4日午後11時41分メール(甲81の215)
「こんにちは。私は神戸に住む二人の娘を持つ父親です。『慰安婦ねつ造の朝日新聞植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるのだという。』この記事を見て驚いています。神戸松蔭女子学院には、すごく良いイメージを持っていました。しかし、平気で嘘を書き、日本を貶める記事を書く新聞記者を教授にするとは正気の沙汰とは思えません。娘を神戸松蔭に進学させることも考えていましたが、平気で嘘を書く新聞記者が教授をやっている大学には、到底進学させられません。
(448)猛然と走って逃げた朝日新聞「慰安婦」記者
2014.2.2 18:00(2/2ページ)〔花田紀凱の週刊誌ウォッチング〕
やっぱり、殿は“御乱心”だったと言うべきだろう(この場合の“殿”は小泉純一郎元総理も含む)。このところ精力的に韓国批判を続けている『週刊文春』(2月6日号)は今週もワイド型式で『韓国の「暗部」を撃て!』。なかでも注目は『“慰安婦捏造(ねつぞう)”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に』。
(以下、略)
⑳は、原告を「平気で嘘を書き、日本を貶める記事を書く新聞記者」と評している。⑳の筆者は、「ねつ造」の意味を「でっちあげ」すなわち「ないことをあるように偽って作ること」と理解し、文春記事Aの「ねつ造記者」を「嘘を書く記者」の意味に理解しているのである。一般読者の読み方を基準とすれば、文春記事Aのいう「ねつ造」が単なる「論評」ではなく、「嘘を書いた」という事実の摘示であることも明らかである。
以上から明らかであるとおり、神戸松蔭女子学院大学に送付された抗議ファックスや抗議メールの多くは、❶文春の記事Aを引用していること、❷当該記事から、原告が「でっち上げ」その他、社会的に批判に値する反社会的行為をしたと考えていること、❸原告を受け入れる大学にも攻撃を向けるものである。
❶からすれば、原告に対する壮絶なバッシングは、原告記事Aが引き金になっていることは明らかである。また、❷からすれば、記事Aにいう「ねつ造」は、単なる論評の類ではなく、原告が強い非難に値する反社会的な行為をしたとの認識を一般読者に与えたものであることも明瞭である。さらに、❸からすれば、神戸松蔭女子学院大学が原告との雇用契約を困難であると考えるに至った原因がこれらの抗議ファックスや抗議メールにあったことも明らかであり、その経緯は以下に述べるとおりである。
5 神戸松蔭女子学院大学との雇用関係を終了するに至る経緯
(1)神戸松蔭女子学院大学担当者との面談
2014年1月31日、原告は、神戸松蔭女子学院大学の事務局長から、「週刊文春に出た記事のことで、『なぜこんな者を教授にするのか』などと、講義の電話などが来ている。この件で話をしたい」との連絡をうけ、神戸にて面談を行うこととなった。「週刊文春に出た記事」とは、先に述べた「“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」との記事である(本件記事A)。
同年2月5日、原告が、神戸松蔭女子学院大学の担当者3名と面談する際、原告は、担当者らに捏造記事にあたらないことを示す資料を提示し経緯の説明を行おうとしたところ、担当者らは「説明はいらない。この記事が正しいかどうかが問題ではない」と述べ、原告に対し、「文春の記事を見た人たちから『なぜ捏造記者を雇用するのか』などという抗議が多数来ている。記事の内容の真偽とは関係なく、このままでは学生募集などにも影響がでる。松蔭のイメージが悪化する」、「この記事によって多数の抗議が大学側に来ており、このまま4月に植村さんを受け入れられる状況ではないので、どうすればいいのか相談したい」と申し向け、抗議として送付されているメール等のコピーを原告に提示した。すなわち、担当者らは、原告に対するバッシングの真偽とは関係なく、原告に対し教員への就任辞退を求めてきたのである。
また、担当者らは、原告に対し、「1月27日(月)に文春の記者から電話があり、①植村氏が教授になるのか、②どんな講座を持つのか、などの問い合わせがあった。メールで訪ねてくれと言うと、文春記者からいろいろ書いたメールが来た。それで、植村さんが、慰安婦の記事を書いたことを知った。『週刊文春』の記事が出てからは、抗議電話、抗議メールなどが毎日数十本来ている状況になっている」としたうえで、「学校前で何らかの(右翼の)行動が危惧される。マイナスイメージが出たら、存亡の危機にかかわる。雇用契約を結んでいるので、破棄するのは難しいが、植村さんに教師として来てもらうのは、難しいんじゃないかと思っている。」と告げた。
さらに、担当者らは「産経新聞に『WiLL』編集長の花田氏が、雑誌ウォッチングという記事を書いているが、その中で、この文春の記事が一番面白いと取り上げており、さらに(情報が)拡散している」とも述べた。
当該記事は、同年2月1日付の産経新聞読書欄掲載の「花田紀凱の週刊誌ウォッチング」という記事で、「週刊文春」の記事を紹介した上で、「日本軍による慰安婦強制連行があったとする一連の記事を書いた植村隆記者が今年3月で朝日を早期退社、神戸松蔭女子学院大学の教授になるのだという。(中略)こんな記者が、女子大でいったい何を教えることやら」との記載がなされていた。
大学側から教授職を辞退するよう求められたものの、原告は、2014年2月時点で朝日新聞社の退職手続等を進め、大学への就職準備を行っていたため、容易に応じることはできず、面談は平行線となり、当日の面談は終了した。
(2)神戸松蔭女子学院大学への就任辞退とそれに対するネット上の反応
面談を実施した翌日である同年2月6日、同大学の執行部は、教授会において、「『週刊文春』の報道で、大学に脅迫が来ている。過激な団体から攻撃を受け、学生が巻き込まれるような事態は避けたい。理事会は、植村氏の就任は難しいと判断した」と報告するに至っており、同大学が苛烈な攻撃に晒された結果、原告を雇えないと判断した。他方、原告は、弁護士を通じて、神戸松蔭女子学院大学との間で交渉を行っていたが大学側の姿勢は変わらなかったため、バッシングを受け続ける大学側も被害者であると考え、同大学への就職を諦めることとした。
同大学は、週刊文春への取材ないし同大学への電話抗議等に対し、原告の就任が白紙となったことを伝えたところ、同年3月4日のツイッターには、「朗報【売国奴・植村隆失職www】いわゆる従軍慰安婦詐欺の主犯・植村隆について神戸松蔭女子学院大学に問合せた結果、教授就任の話は消滅し講師に招く予定もないとのこと。こままアカ日新聞で売国活動を続けるのか、挑戦に亡命してトンスル女子大学の教授に就任するかなどについては不明」との投稿がなされた(甲82)ほか、同月6日には、あるブログでも、「【吉報】慰安婦詐欺の植村隆、教授就任の件が消滅したらしいぞ!!!神戸松蔭女子学院大学さんの英断に拍手!!!」との記載がなされ、コメント欄には「私も以前、凸電しましたので、とても嬉しいです」「絶対に逃がすな!!!地獄のはてまで追い詰めるんだ!!!」「朝日新聞の反日記者は、老後の生活設計を見直さなければならなくなった」との罵詈雑言が書き込まれていた(甲83)。
原告は、同年3月7日、同大学と正式に合意し、契約解除を行った。大学はその事実をインターネットで公表している(甲84)。
(3)ここまでの総括
すでに見たとおり、神戸松陰女子学院に送られた大量の抗議ファックスや抗議メールの多くは❶文春記事Aを引用し、❷原告が反社会的行為をしたとの認識を示し、❸原告を雇用する大学への攻撃をしかける意図を示す点で共通していた。神戸松陰女子学院は、大学への攻撃を仄めかす❸の文言に怯え、原告との雇用を打ち切ったのである。これは、「学問の自由」「大学の自治」に対する深刻な攻撃であるが、大学は経営上の理由を優先したものと考えられる。そして、多くのファックスやメールが文春記事Aを引用していることからすれば、このようなバッシングに誘因を与えたのは、文春記事Aである。
また、多くのファックス・メールが、原告を「ねつ造記事を書いた」「嘘つき」であり、それゆえ「日本の国益を大きく損ね」た反社会的なものであったと強く非難していることが分かる。このことから、文春記事Aのいう「ねつ造」は単なる論評の類ではなく、原告が強い非難に値する反社会的行為をしたとの印象を一般読者に与えるものであったことも分かる。
以上からすれば、文春記事Aは、原告が強い非難に値する反社会的行為をしたとの印象を一般読者に与えて原告の社会的評価を低下させるとともに、勤務先である神戸女子学院大学への攻撃を誘発し、原告が同大学との契約解除をやむなきに至る原因を作ったと断言できる。
6 非常勤講師を務める北星学園大学に対する攻撃
(1)北星学園大学及び原告の家族への脅迫
原告は、同年3月末をもって、朝日新聞を早期退職し、原告は、北星学園大学での非常勤講師からのみ収入を得るようになった。
しかし、同年5月頃から、札幌市の北星学園大学に原告の解雇を求めるメールや手紙が大量に押し寄せ始めた。5月28日には「あの元朝日(チョウニチ)新聞記者=捏造朝日記者の植村隆を講師として雇っているそうだな。売国奴、国賊の。」「植村の居場所を突き止めて、チンポをちょん切って、なぶり殺しにしてやる。」「すぐに辞めさせろ。やらないのであれば、天誅として学生を痛めつけてやる」(甲74)等とする脅迫状が複数通届くようになった。
北星学園大学への攻撃が行われている中、同年8月1日、被告文藝春秋の編集部は、北星に対し「植村氏をめぐっては、慰安婦問題の記事をめぐって重大な誤りがあったとの指摘がなされていますが、大学教員としての適性には問題ないとお考えでしょうか。」とする文書を送りつけ、大学側に原告との雇用契約の解約を迫るに至った(甲27)。
このような原告の状況を受けて、朝日新聞社は、8月5日付朝日新聞紙上の「検証記事」において原告が記事を捏造した事実はないとして、本件記事の内容を否定した(甲30)。
しかし、同月6日、被告文藝春秋は、同日発行の「週刊文春8月14日・21日号」に「慰安婦火付け役朝日新聞記者はお嬢様女子大クビで北の大地へ」と題する記事(文春記事B)を掲載し、原告が神戸松蔭女子学院大学との契約を破棄した経緯や、現在は札幌市内の大学で非常勤講師をしている事実を伝えた上で、「韓国人留学生に対し、自らの捏造記事を用いて再び"誤った日本の姿"を刷り込んでいたとしたら、とんでもない売国行為だ」等と主張した(甲8)。
前月7月に19通に過ぎなかった北星宛ての抗議メールは、8月は530件と激増した。また、7月に7件に過ぎなかった抗議電話は、8月には160件に激増した(甲85)。とりわけ抗議電話は一日平均8件近い数であり、北星学園大学の業務そのものを圧迫したであろうことは想像に難くない。
7月28日には、大学に対し、再び脅迫状が届いた。内容は公開されていないが、新聞記事によれば、「くぎ入りガスボンベ爆弾を仕掛ける」といった内容である(甲31)。脅迫状は、12月27日にも届いていた(甲86)。この際は「学生の家の何件かから出荷(出火)する」「事件が起こったら拡散する」という内容である。
さらに、慰安婦に関する原告の記事が出た際には生まれていなかった原告の娘も批判者たちの攻撃を受けた。8月には、娘が高校生平和大使に選ばれていたことをバッシングの対象にされ(甲12)、このブログには、「晒し支持!断固支持!」「朝鮮人と結婚したら日本の国外で暮らす法律を作れよ。もしくは韓国人との結婚を禁止しろ」「半チョッパリやね~不細工でも整形があるさ」(右肩の頁番号で10of26、以下同じ)、「私のお父さんは売国奴です。お母さんは密入国朝鮮人の売春婦です。あたしはとても誇りに思います。おい涙ふけよ」「こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。親父が超絶反日活動で何も稼いだで贅沢三昧で育ったのだろう。自殺するまで追い込むしかない」(12of26)、「いやん婦像そっくりのどブスチョン餓鬼顔面だわい」「娘は関係ないとか言うなよ植村 さらすことで抑止力が高まる」「にしても、チョンの遺伝子仕事し過ぎだろ。全人類に対するガン細胞とかじゃないだろうか。」(16of26)、「この一族、血を絶やすべき」「この娘整形しないと」(18of26)、「かわいそうだけど、よし追い込むぞ」「アカの娘のビラビラも赤いか?今度開いてやろうか?笑」(20of26)「これは叩いても良心が全く痛まないオモチャだわ」「キモヨナみたいな典型的なチョン顔だな」(21of26)等の書き込みがなされた。この写真は娘の学校のHPから無断転載されたものであった。9月8日には、原告の娘の写真はインターネットで公開され「こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。親父が超絶反日活動で何も稼いだで(ママ)贅沢三昧で育ったのだろう。自殺するまで追い込むしかない」「なんだまるで朝鮮人だな。ハーフだから当たり前か。さすが売国奴の娘にふさわしい朝鮮顔だ」と記載された(甲11)。別のブログでも、「朝日新聞・植村隆の娘が高校生平和大使に選ばれていたことが発覚!」などとして同じ写真が公開され、「慰安婦像のモデルってこいつか?」と書き込みがなされた(甲28)。別のブログでは、娘の実名と所属高校名が公開され(甲29)原告の息子の同級生も、原告の子どもに間違われ、バッシングを受けた(甲29の男子高校生の写真)。
2015年2月2日には、入試直前の時期を狙って、北星学園大学に故脅迫状が届いた(甲87)。そこには「貴殿らは、我々の度重なる警告にも関わらず、国賊である植村隆の雇用継続を決定した。この決定は国賊である植村隆による悪辣な捏造行為を肯定するだけでなく、南朝鮮をはじめとする反日勢力の走狗に成り果てたことを意味する」「我々が制裁を与える相手は、学生から貴殿ら教職員及びその家族へと移行した」「2月6日から8日にかけて6会場で実施される一般入学試験会場とその周辺において、その場にいる教職員及び受験生、関係者を無差別に殺傷する。3月13日予定の修了式・卒業式においても入学試験と同じく殺傷する。」「『国賊』植村隆の娘である植村●●(実名)を必ず殺す。期限は設けない。何年かかっても殺す。何処へ逃げても殺す。地の果てまで追い詰めて殺す。絶対にコロス」等と記載されていた(甲75)。
(2)北星学園大学に送られた抗議メール及びファックスの内容
北星学園大学になされた抗議のメールは、2014年5月から2015年3月までの間で1600通を超える(甲85)。これらは、❶文春の記事Aを引用していること、❷当該記事から、原告が「でっち上げ」その他、社会的に批判に値する反社会的行為をしたと考えていること、❸原告を受け入れる大学にも攻撃を向けること、の3点で神戸松陰女子学院大学に向けられたものと共通するものの、❹原告の家族にも脅迫を行っている点、❺文春記事Bで取材に答え、原告を雇う意義を述べた北星学園大学長に対して激しい攻撃を向けている点が加わり、より深刻になった。松陰の雇用契約解除という「成果」を受けて、バッシングが激化かつ陰湿化したことを示すものである。その一部を以下において記載し、検討する(甲88)。
①5月25日午前4時21分メール(甲88の166)
「今更言うまでもありませんが植村氏は『従軍慰安婦』というウソを広めた人です。(従軍だったという証拠なく、あるのはコロコロと内容が変わる韓国女性の発言のみです)植村氏は世間からこれだけ注目されているにもかかわらずいまだに何1つ発言していません。以前、朝日新聞の支社へ取材に行った記者の方がいましたが、植村氏は答えることなく非常階段をかけおり、タクシーに飛び乗り逃げました。そんな人間を講師にするのですか?今一度考え直して頂けたらと思います。」
②5月25日午前9時31分メール(甲88の173)
「どうして20年以上も日本を貶め続けている植村隆が貴学で講師をしているのですか。北海道には慰安婦問題の情報が届いていないのですか。植村隆の記事は意図的な捏造であるとしか考えられませんが、100歩下がって誤報であったとしても、それを20年以上も訂正しようともしない人間にメディアや国際交流について教えさせるなんて言語道断です。
・ジャーナリストの大高未貴さんの報告です。植村隆は逃げているそうですね、言わずもがな
(中略)
Wikiの「植村隆」と「北星学園大学」はすでに相互リンクがつけられています,神戸松蔭は瀬戸際でとどまることができましたが、貴学は売国奴を雇用した無知な大学というレッテルが貼られてしまいました。自業自得です。」
③5月26日午後5時6分メール(甲88の195)
「元・朝日新聞の植村隆氏が貴校に教員採用されていると知りました。植村氏は、従軍慰安婦について捏造記事を書き、日本を貶め、未だに訂正も謝罪もしていません。このような良心のかけらもない、売国奴と呼ぶべき人間が、日本の大学の教壇に立つことがあってはならないと考えます。1日も早く、教壇から降りていただくことを望みます。今はインターネットの影響力が大きい時代です。マスコミがこのことを報道していない現状でも、ネットで情報は拡散し、既に日本中から抗議のメールや電話が届いていることと思います。貴校が植村氏を採用したという情報は、これからも北海道の高校生達にネットを通じて広がり、来年度の志願者に影響を与えることでしょう。また、植村氏が神戸松蔭女子学院大学の教授になりそうになった今年1月30日には、週刊文春がまずスクープし、続いてネット世論も沸騰して、結局破談になりました。今回は順番が逆になりますが、そのうち週刊誌が取材に来るかもしれません。週刊文春2月6日号をご覧になってみることをお勧め致します。」
①②③は、❶文春記事を引用し、❷原告の反社会的行為を非難し、❸大学に攻撃を向ける点で神戸松陰女子学院に送られたものとほぼ同様の内容を持っている。①では、原告を「『従軍慰安婦』というウソを広めた人」と記載しており、「ねつ造記者」が「嘘を書く記者」の意味で理解されていることを端的に示している。②では、大高氏のレポートが引用されており、文春と「桜チャンネル」の連携プレーが功を奏していることを示している。大高氏の桜チャンネルの番組動画は、北星学園大学への抗議、攻撃メールでも多数、リンクを張って紹介され、メールを出した者が煽られたことが分かる。③は「今はインターネットの影響力が大きい時代です。」「ネットで情報は拡散し、既に日本中から抗議のメールや電話が届いていることと思います」「来年度の志願者に影響を与えることでしょう」等とインターネットを使ったバッシングの構造をうまく説明している。
④6月24日午後2時2分FAX(甲88の257)
「もし上の記事に出てくる高校生が「植村隆の娘」ならば、彼女は早い段階で「日本を脱出して海外に留学する」んじゃないでしょうか? もし彼女が「植村隆の娘」ならば、少なくとも日本国内では「父親の因果」からは逃げられませんし、彼女自身も「自責の念を感じている」かもしれません。
本来は彼女には何の責任もないはずですが、植村隆の無責任な行動が、子供の将来にさえ悪影響を及ぼすかもしれません。一家総出での日本脱出もあるかもしれません。そうなると「植村隆の罪」は永遠に消えることはなくなりますが。私は、植村隆は自分の書いた記事の影響を今こそしっかり考えて欲しい。なにゆえ「誤報」とさえ言われている記事を書いたのか?それは自分の意思で書いたのか?それとも誰かに頼まれて書いたのか?日本人は「いさぎよし」を美徳としています。植村隆に「日本人の血」が流れているのなら、ここはいさぎよく全面的に謝罪すべきではないでしょうか?植村隆と朝日新聞こそが、韓国による日本攻撃の道筋をつけ、現実問題として、アメリカの日本人の子供たちへのいじめが発生しています。私は「植村隆の娘」と思われると生徒の名前を公開しませんが、彼女の名前はいずれネット上にあふれかえるでしょう。「目には目を」は人を盲目にします。理性は怒りには勝てません。By なでしこりん」
④は原告の家族に対する攻撃を示唆する比較的初期のファクスである。原告ではなく、その家族(とりわけ、原告の記事が執筆された当時生まれてもいなかった高校生の娘)をも標的にするのは、どう考えても卑劣極まりない。時に差出人名も発信元のアドレスが書かれている場合も少なくなかった。こうした卑劣極まりない脅迫が堂々と、あたり前のように行われた点に、植村バッシングの異常性がある。
このような異常なバッシングの火に油を注いだのが、8月6日午後0時にネット配信された文春記事Bである。次の5通は、同日のものである。
⑤8月6日午後5時3分メール(甲88の339)
「「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」いわゆる従軍慰安婦問題の“火付け役"となった元朝日新聞記者の植村隆氏を非常勤講師として迎え入れた札幌市内の大学の学長はそう庇ってみせた。
誤りを認めその誤りから発生した問題について自覚し反省し謝罪したならその庇いも通用するであろう。当の元記者はなにをした?逃げているだけである。逃亡者を匿う御学園は共犯者である。」
⑥8月6日午後6時14分メール(甲88の343)
「「慰安婦火付け役朝日新聞記者はお嬢様女子大クビで北の大地へ」と言う週刊誌記事。誤報と言うが関係者の植村。疑惑の声を何十年も無視して、根拠のない話を新聞報道。これで義理の母親が利益を得ていたとなると、「捏造」と言われるのは当然。誤報は罪でなくとも放置は罪。こんな人が講師をする大学はどんな酷い所なの?「人のだまし方」「提造を放置する方法」とか教えるの?かなり怖いね。」
⑦8月6日午後7時3分メール
「「韓国人留学生に対し、自らの捏造記事を用いて再び誤った日本の姿を刷り込んでいたとしたら、とんでもない売国行為だ」と文春。つまり貴校にはねつ造を教え込まれ「日本人には何をしても無罪」と思い込んだ韓国人学生がいる可能性があると言う事?これは日本人は避けるべきだね。少し前に「日本人か?」
と確認して刺した韓国人の事件があった。捏造教育の確認もしていないのだろう。この大学は危険。」
⑧8月6日午後7時9分メール(甲88の352)
「まさかこんなに近くに居たとはな!恥ずかしいぞ!北星学園大学!田村学長!「韓国語に堪能で、うってつけの人材駄目だ」(ママ)はあ?国賊植村のどこがうってつけなんだ?そう考える田村学長さんもガッツリ左派だな。日本がどのような状態になっているのかが全く勉強していないようだな。「彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと」??その一部をやらかした事で日本はとんでもない事になってるだろが!駄目だ、植村は北海道から出てって貰わないと。植村のやった事を知ってて雇ったと言う事で大汚点!司じ左派でも神戸松蔭女子学院大学は流右に世論がどうなっているのかを察し雇用契約切ったのは正解、当然の事だ。北星学園大学では「慰安婦問題の記事に触れるのはタブー」??朝日の記事で日本国内の問題や国際情勢を教えてる?朝日の記事なんぞ誰も信じる生徒などいろ訳ない(ママ)だろ、生徒は捏造をただ聞いてるだけ。これだけ大問題になっている慰安婦問題など生徒は確実にネットで真実を知ってるに決まってるだろが!田村学長がそれに気付いてないなら学校自体が終ってるわ!北星学園大学と植村の繋がりを道民に拡散させんとならない。左翼学校に(以下文字化け)」
⑨8月6日午後9時44分メール(甲88の366)
「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」いわゆる従軍慰安婦問題の“火付け役"となった元朝日新聞記者の植村隆氏を非常勤講師として迎え入れた札幌市内の大学の学長はそう庇ってみせた。と週間文春の記事で学長はおっしゃられていますが間違いを犯したら人間としてまず謝罪すべきではないですか?しかもメディアという絶大な力をつかって事実を捻じ曲げ捏造したのが植村隆であり朝日新聞です。ですから、まず植村隆に謝罪の記者会見を聞かせて公式に記事を捏造した事を認めさせ謝罪をしてから非常勤講師として招くべきではないですか?こんなことではそちらの大学でも嘘、真実を意図的に捻じ曲げた内容の授業を行い大学に多大なる損害を与えるのではないかと思います。」
このように、8月6日に来た⑤から⑨の5つは、❶文春の記事Aを引用していること、❷当該記事から、原告が反社会的行為をしたと考えていること、❸原告を受け入れる大学にも攻撃を向けているが、特に、❺北星学園大学長の発言に対して、「共犯者」「学校自体が終わっている」「左翼学校」等と激しい攻撃を向けている点で共通する。このことは、文春記事Bの影響力の大きさを示すものである。また、⑨は、「捏造」の意味を「事実を捻じ曲げること」と正確に理解しており、一般読者の読み方を基準とすれば、文春記事はそのように読み取れることを示している。
文春記事Bの学長発言を引用するなど、この記事の影響を受けたとみられる抗議メールは、文春発売の8月6日から1カ月で、70通近くに上っている。
⑩8月7日午前0時18分メール(甲88の384)
「元朝日新聞記者植村隆と言う人が韓国留学生の通訳として働いていると聞きました。学長様は、捏造記事は「長い記者生活の中でごく一部のこと」と仰り、彼を採用したと聞きました。長い記者生活の中でごく一部とはいえ、これ程日本と日本人を貶め、窮地に追いやってる事が、ごく一部の事だからと許されるのでしょうか?本来ならば、逃げ隠れせず国民の前にでできて、釈明出来るのであれば釈明するよう諭すのが学長様の務めでは無いでしょうか?日本と日本人に詫びても許されない事をしたからこそ、逃げ隠れしているのでしょ?私は、植村隆を国会喚問して是非を正してもらいたいです。学長線のお力で日本を、日本人を救って下さい。植村隆が居ることで、学生さんの就職活動にも支障を来す事があるかも知れません(以下、略)。」
⑪8月7日午前9時02分メール(甲88の390)
「元朝日新聞記者の植村隆氏、北星学園大学の非常勤講師に。北星学園大学の考えは「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと」。「罪を憎んで人を憎まず」ですね。それでも犯した罪をなかったことにはできません。日本を意図的に貶めた植村氏は、その犯罪的な誤りを認め、まず国民に謝罪すべき。そしてその罪を償うべき。反省の意志を公にしていない植村氏を講師で受け入れる北星学園大学の対応は理解できません、抗議します。それと、留学生に頼る大学経営には疑問を感じます。結局は東京大学のように「留学生に配慮し式典で、国旗・日の丸は掲げません」となりかねません。どうか反日国家の留学生に迎合し、日本を貶める教育だけはしないでいただきたい。」
⑫8月7日午後4時56分メール(甲88の445)
「慰安婦火付け役朝日新聞記者はお嬢様女子大クビで北の大地へ2014.08.06 12:00「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」いわゆる従軍慰安婦問題の“火付け役"となった元朝日新聞記者の植村隆氏を非常勤講師として迎え入れた札幌市内の大学の学長はそう庇ってみせた。
いまや朝日でも“なかったこと"に 植村氏といえば、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦がソウル市内に生存していることがわかったとする記事を書き、慰安婦問題の先鞭をつけた記者である。(以下、文春記事Bを引用)。」
⑬8月7日午後5時5分メール(甲88の447)
「「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。」日本にとっては重大な損失ですが。学長さんも一緒に責任取るのですか?」
⑭8月7日午後8時14分メール(甲88の455)
「貴校は非常勤講師として、朝日新聞の捏造記者・植村隆を韓国語が堪能という理由で講師として迎え入れているとの事ですが、「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」との学長の言葉は本当ですか?長い記者人生の中でごく一部であれ「捏造」を許すのですか?彼の捏造のせいで、現在の日本が置かれている立場は理解されていますか?また、日本に留学に来た外国人に対し出身国の言葉で講義を行わなければならない理由はなぜですか?韓国語が話せる講師が必要であれば、当然インドネシア語や中国語、スペイン語が堪能な講師も居るんですよね?朝日新聞も昨日の新聞紙面で捏造である事を認める内容の文を掲載しましたが、捏造した本人はすでに退職しているためその謝罪はありませんでした。日本の国益に反する文を掲載してたのにかなり無責任です。本人は、取材から走って逃げるばかりでまったく取材に応じないとの事です。ぜひ、捏造した本人の謝罪を聞きたいものです。貴校が左寄りでないことを願います。」
⑮8月7日午後10時20分メール(甲88の467)
「植村隆の雇入れに抗議します 田村学長は「過去の誤り」とおっしゃっていますが、植村氏の発信した記事は、韓国の悪用するところとなりそれが世界に発信されて、あたかも現在事実であったかのような定着の仕方をし、アメリカでは次々に慰安婦像が建てられ現地の日本人が差別やいじめに合うなどの被害をもたらしているどころか、被害は今なお現在進行形で拡散している状況にあり、決して「過去の」誤りなどではありません。それに、植村隆氏は日本国家と国民に対して、記事訂正の声明と謝罪もありません。これは人間的にも問題ではないでしょうか。こういう人聞を教育の現場に置くことが妥当だとお考えでしょうか。(以下、略)」(同文のメールが多数あり)
⑯8月9日午前4時47分メール(甲88の568)
「ありもしない従軍慰安婦問題の“火付け役"となった植村隆氏を非常勤講師として受け入れている田村信一学長に抗議します。田村学長は「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」とおっしゃったとのこと。なんという認識の甘さでしょうか。これを聞いて本当に憤りを感じています。日本の先人たちに対し「韓国女性をセックス奴隷にした醜い日本人」とさんざん貶める文章を国内だけでなく世界中に拡散しておいて「ちょっと間違っちゃったみたいだね」で済む問題だと思っているのでしょうか。ありもしない罪をでっち上げ、さんざん日本人の尊厳や名誉を傷つけておきながら、何食わぬ顔で人様にものを教える教授になるなど、道徳的にも人道的にもあり得ないことだと思います。
(中略)この植村を教授として受け入れているということは、すなわち、北星学園大学には道徳観もない、人権意識もないということを宣伝しているようなものです。すぐにこの植村氏を解雇するべきです。教育者なら、植村氏には自分の付いたウソ、捏造話しが浸透している地域に行って、懺悔の講演会でも開くよう提案して差し上げて下さい。」
上記⑩から⑯のメールも❶文春記事の引用、❷原告が反社会的な行為を行ったとの認識、❸大学への攻撃、❺学長発言の引用という点で共通する。
とりわけ、⑯のメールは、原告記事を「ありもしない罪をでっちあげた」もの、「ウソ」と位置づけていることからして、一般読者の通常の読み方を基準とすれば、文春記事Bの「捏造」が単なる論評の類ではなく、事実を捻じ曲げて記事を書くことと理解されることを示している。
⑰8月10日午前11時39分メール(甲88の617)
「おまえらいい加減にしとけよ! 赤報隊に襲われて死ね!」
⑰の差し出し人名は「日本太郎」、メールアドレスは「omAerA-zenin-shine@kuso-dAigAku.kr」。ローマ字で「おまえら ぜんいん しね くそ だいがく」と読める。5月、7月に相次いで、爆破予告の脅迫状が届き、志願者向けのオープンキャンパスは、黒服の警備員の姿が目立つ異様な雰囲気で行われるなど極度の緊張状態が続く学内では、電話の応対で体調を崩し、辞職する人まで出た。記者が殺され「赤報隊」が犯行声明を出した朝日新聞阪神支局襲撃事件を想起させるこのメールは、恐怖を与えるものだったに違いない。
⑱ 8月10日午後3時59分メール(甲88の626)
「植村隆に転送して下さい ワイドショーにも出てきました チョー有名人になりつつあります 娘の名前もでてますよ 危ないです 気をつけてください 生きてください」
⑲8月15日午前10時6分メール((甲88の703)
「ネットでの騒ぎの広がりで、娘さんの名前や顔写真が出回ってますので、注意して下さい」
⑱と⑲は、原告の娘を攻撃するメールで悪質である。そして、以下に示す⑳のメールは、北星学園に送付されたものの中でも最も醜い部類の一つである。
⑳8月9日午後4時29分メール(甲88の573)
「【週刊文春] 慰安婦火付け役元朝日新聞記者・植村隆氏はお嬢様女子大クビで北の大地へ(以下、文春記事B貼付け)
(中略)
3 :(ID等省略)国家を窮地に追い込んだ張本人の一人だ。刺せ!
(中略)
6:(ID等省略)自殺に追い込め
(中略)
20:(ID等省略)>大学では主に韓国からの留学生を対象に、『メディアで読む日本そして世界』という講義などを担当しています。朝日の記事を学生に読ませて日本国内の問題や国際情勢について考えてもらうというもので、『早口だが、丁寧に教えてくれる』と評判です」韓国人留学生に対し、自らの捏造記事を用いて再び“誤った日本の姿"を刷り込んでいたとしたら、とんでもない売国行為だ。
捏造歪曲した日本を教えてまた騒動起こしそうだな
(中略)
26:(ID等省略)で何時ごろ死刑になる予定なの?
(中略)
84:(ID等省略)新聞という公器をつかって嘘を垂れ流しておきながら、謝罪も反省もない人間に対して、「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。」と言ってしまう学長は教育者としていかがなものか
(中略)
86:(ID等省略)笹井を自殺させたマスゴミの追い込みをこういうとこで発揮させないとね
(中略)
95:(ID等省略)自殺するまで追い込みをかけよう
(中略)
117:(ID等省略)凸ってホント効くんだな
118:(ID等省略)ちゃんと植村追い出してから公表したね。もう関係ない人ですって。
(中略)
142:(ID等省略)電凸大作戦
(中略)
222:(ID等省略)北星学園大学に圧力をかけて売国奴を自殺に追い込め
242:(ID等省略)文春がんばれ
(中略)
251:(ID等省略)妻がチョンの植村隆を吊るし上げして処刑しろ
(以下、省略)
⑳は、上記❶❷❸❹❺の要素を全て備えているが、原告を自殺に追い込むようにまで呼び掛けている点で、極めて悪質なメールの一つである。「妻がチョン」というのは、原告の妻が韓国人であることを揶揄するものであるが、このように、家族を攻撃の対象とするのも植村バッシングの特徴である。「チョン」とは朝鮮・韓国人に向けらえた差別語であり、ヘイトスピーチである。これは、文春記事Aが公表した事実をもとにしており、このような人種差別・民族差別を扇動したのも、文春記事Aであったといえる。
㉑8月9日午後4時43分メール(甲88の579)
「北星学園大学学長が植村隆のことを庇って言った次の言葉は、真実でしょうか?「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」学長は、朝日新聞の彼の捏造記事を書いた行為を誤りと認識しているということですね?で、その誤りを誤りとして植村自身が反省しているのなら、捏造記事のことで植村を売国奴と評価することは、それこそ誤りでしょう。しかし、彼はその提造記事について何も釈明していないではないですか?ただひとつの誤りといいますが、そのことで日本の国益が著しく損なっているならば、看過できない誤りでしょう。ましてや、植村自身が誤りを認めていないのですからね。以下のサイトに目を通してください。(以下、略)
htto://Ai.2ch. sc/test/reAd.cqi/newsplus/1407309400/
(このサイトは現在削除されているようである。)
㉒8月10日午後2時36分メール(甲88の623)
「全国的には読売新聞、産経新聞、ニッポン放送、週刊新潮や週刊文春など、関西ローカルのテレビ各局でも連日、朝日新聞虚偽報道問題で非常勤講師の植村隆氏がクローズアップされる度に必ず、「北星学園大学」の校名が出てきます。北海道以外の地域においては、現入学生就職への悪影響が相当程度出るかと存じますが、学生や父兄へのフォローはどのようなものになりますか?私は関西で高校生向けの学習塾を経営しておりますが、至急フォロ一体制を構築してもらいたく思います。今春、貴校への受験予定者をあずかっておりますが、非常に心配でなりません。入学後に植村氏の証人喚問が行われるような事態にならないように要望いたします。特に関西では北星学園大は認知度がほぼ無く、「反日大学」のような取り扱いをされているだけに真撃な対応をお願いします。」
㉓8月10日午後8時9分メール(甲88の629)
「学長が植村講師に関してコメン卜された、「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」とのことですが、植村講師が記者時代に書いた記事により日本国民全体が世界より蔑まされることになり重大なことであり一部のことではすまされることではありません。今回の慰安婦誤報により、ねつ造であるのは確実であり、植村講師には重大な責任があります。本人に記者会見を行わせ、明確な説明を求めます。」
㉔9月30日午後5時59分メール(甲88の1726)
「植村さんについて北星学園は「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと。それだけで彼を評価するのはどうかと思います」北星学園とは、そのような学園でありましたか。植村さんの書いた捏造記事により、国際的に日本は「女性を性の奴隷にした国」という間違った汚名を着せられております。「彼の評価」など、どうでもよい話です。日本をここまで辱めておいて、何の責任も取らないことに対して「恥を知れ」と言いたい。そして、そのような人物と知りながら、教壇に立たせている北星学園にも失望いたしました。北海道人として、北星学園の存在は恥ずかしい限りです。子供は絶対、北星学園には入学させたくないと、良識ある日本国民は思ってます。」
上記4つのメールも、文春記事Bを引用し、原告及び大学、学長発言を非難している。これらのメールは、「大学側はたったひとつの誤りで、在校生、卒業生をも貶めている」(㉑)、「『反日大学』のような取り扱いをされているだけに真撃な対応をお願いします」(㉒)、「そのような人物と知りながら、教壇に立たせている北星学園にも失望いたしました。北海道人として、北星学園の存在は恥ずかしい限りです。子供は絶対、北星学園には入学させたくないと、良識ある日本国民は思ってます」(㉔)等と北星学園大学を激しく非難している。このようなメールに大学側が動揺したであろうことは想像に難くない。
次のメールはさらにエスカレートしている。
㉕9月30日午後6時30分メール(甲88の1728)
「当然だ、貴校は、特亜の学校か。用はない。廃校しろ
記事
元朝日記者批判し「天誅」、北星学園大に脅迫文 読売新聞2014年9月30日(火)17:33
北星学園大学(札幌市厚別区)に、いわゆる従軍慰安婦報道に携わった別の元朝日新聞記者の非常勤講師を辞めさせないと、学生に危害を加えるという趣旨の脅迫文書が届いていたことが、捜査関係者への取材で分かった。(以下、略)」
㉕のメールの酷さは、北星学園大学に脅迫状が送られたとの新聞記事を全文引用した上で、「当然だ」としてその犯罪を肯定していることである。このようなメールは、学校側からして、さらなる犯罪の予告ともとれる。そして、メールは「貴校は、特亜の学校か。用はない。廃校しろ」等と北星学園に廃校を求めている。「特亜」とは中国や韓国を指すネットスラング(インターネット上の隠語)である。このような偏見に晒された大学側は恐怖し、原告の存在を負担に感じたことは想像に難くないところである。
注目すべきは、こうした攻撃メールが、「参考資料」として、西岡力東京基督教大学教授の論文や、産経新聞など、植村氏の慰安婦問題の記事を「捏造」などと批判してきた言説を、引用している点である。以下は、文春記事Bにある北星学園大学長発言を引いて、原告に記者会見を開かせるよう求め、その後繰り返し回答を要求する抗議メールを繰り返した人物が書いたものだ。
㉖ 8月28日午後2時30分メール((甲88の794)
「ご検討の参考資料として、以下を送信します。
「14歳の時に40円でキーセンに売られた」と証言する金学順さんに絡んだ『朝日新聞』91年8月11日の“スクープ”の裏側だ。最初の朝日新聞のスクープは、金学順さんが韓国で記者会見する3日前です。なぜ、こんなことができたかというと、植村記者は金学順さんも加わっている訴訟の原告組織「太平洋戦争犠牲者遺族会」のリーダー的存在である梁順任常任理事の娘の夫なのです。つまり、原告のリーダーが義理の母だったために、金学順さんの単独インタビューがとれたというカラクリです。(『WiLL』5月号 西岡論文「すべては朝日新聞の捏造から始まった」67~68頁)
更に西岡氏は、植村隆が義母の裁判を有利に運ぶために「キーセンに売られた」事実を意図的に隠蔽したことも糾弾している。(以下略)しかも、後に植村隆の韓国人嫁の母(義母)「梁順任」は【賠償詐欺】で摘発された。」
この人物は、西岡論文のほか、原告をネット上で攻撃し続けていた池田信夫氏のブログや、北星学園大学への電話による抗議、「電凸」のやりとりをネット上でさらした記録なども、メールに付記し、執拗に攻撃メールを送っている。つまり、西岡氏の言説や、文春の記事に影響されながら、自らも北星に攻撃を繰り返す、典型的なパターンといえる。
(4)韓国ソウルのカトリック大学への就任
2014年9月30日、北星学園大学は大学の自治を守るという観点を貫き、原告の雇用継続を決定した(甲89)。しかし、その後も「学生を痛めつける」「原告の娘を殺す」という脅迫等が継続したため、警察に警備を依頼するほか、警備会社にも警備を依頼する必要があったため、大学側の負担した警備費用は2年間で約5000万円に及んだ。2014年の3回のオープンキャンパスや秋の学園祭、15年春の入試では厳戒態勢を敷かざるを得ず、抗議への対応や脅迫による心労等で心身共に疲弊し体調を崩した職員もいた。
2015年1月に本訴が提起されると、裁判の原告弁護団事務局長が所属する法律事務所に、本年2月7日午前5時10分から午後0時27分までの間に延べ9件合計431枚の送信者不明のファクシミリが送りつけられ、過剰送信によりメモリーの容量が限界に達してファクシミリ受信が不能となる事件が起きた(甲90)。ファクシミリには、原告の娘さんの写真のキャプションに「売春婦問題」とあり、一緒に別の女性のヌード写真が送られている(甲76)。これは原告代理人の業務を妨害することにより、「原告の弁護をすればお前の娘も被害に遭うぞ」という意味の脅迫であり、原告が弁護士からの弁護を受けることを妨害する意図であることは明白である。同一のファックスは、原告の娘の通う高校にも送られたという。
そのような状況の中、原告は、かねてから打診を受けていた、韓国ソウルのカトリック大学の客員教授に就任することとなった。原告は、地元である札幌で教員を続けることを希望していたが、度重なる脅迫と、2年で5000万円近い警備費用を負担する北星学園大学の状況も考慮して決断をするに至った(甲91)。原告は、職場や家族への攻撃を避けるために、もはや国外に避難する以外に方法がなくなったのである。
第3 本件不法行為の重大性と損害との因果関係
1 はじめに
以上のとおり、被告文春が、2014年1月30日に文春記事Aが公表されると、原告が就職の内定を受けていた神戸松蔭女子学院大学には、採用を取り消すように要求する抗議が247通も送られ、同年8月6日に文春記事Bが公表されると、原告が非常勤講師を務める北星学園大学にも抗議や脅迫が殺到した。植村バッシングに関しては、文春記事Aが端緒となっているとともに、その激化についても文春記事Bが寄与していることは明らかである。
2 文春記事Aと原告の被害
(1)文春記事Aと原告の被害との間に因果関係が存すること
すでに詳細に検討したとおり、2014年1月30日に文春記事Aが公表された以降、神戸松蔭女子学院大学に送られた抗議メールやファックスに共通するのは、❶文春の記事を引用していること、❷当該記事から、原告が「でっち上げ」その他、社会的に批判に値する反社会的行為をしたと考えていること、❸その反社会的行為ゆえに原告の教授就任に強く反対し、原告を受け入れる大学にも攻撃を向けていること、である。これらのことから、抗議メールやファックスは、文春記事Aが端緒になっていること、すなわち、これらの抗議と文春記事Aの公表との間に因果関係があることが分かる。
そもそも、原告が神戸松蔭女子学院大学に就職を内定している事実は文春記事Aが公表されなければ公に知られることはなかった。
文春記事Aは植村バッシングの端緒であり、原因である。
(2)被害が甚大であること
文春記事Aがどれほど原告の社会的評価を低下させたかについては、抗議メールやファックスの文面からも明らかである。すなわち、文春記事Aを読んだ人々は、原告がでっち上げその他の反社会的行為をしたと考えて、原告を「日本人にあるまじき人間」(①)、「ねつ造のために、損ねた国益を考えると国賊と言われるのが当然の人間」(③)、「正真正銘の『国賊』『売国奴』」(④)、「平気で嘘を書き、日本を貶める記事を書く新聞記者」(㉓)だとの印象を持っているのである。そして、その印象をメールやファックスに記載して大学側に伝えている。このような悪印象の拡散により、原告の社会的評価は、さらに低下していくのである。
また、抗議メール・ファックスは、「呆れた学校だ。特亜の学校か。潰れてしまえ。どうしようもない学校だ。PRをどんどんしよう。」(⑦)、「イメージダウンにつながる」(⑨)、「「貴学院の恥」(⑩)、「母校の存続すら危ぶまれます」「学校の格付けを考えますと、今回の件も加わり、かなり落ちると思われます」(⑰)等と、攻撃を大学にも向けている。このことにより、大学側は、原告に対し、「文春の記事を見た人たちから『なぜ捏造記者を雇用するのか』などという講義が多数来ている。記事の内容の真偽とは関係なく、このままでは学生募集などにも影響がでる。松蔭のイメージが悪化する」、「この記事によって多数の抗議が大学側に来ており、このまま4月に植村さんを受け入れられる状況ではないので、どうすればいいのか相談したい」(2014年1月31日の面談における大学側担当者の発言)等と原告に対し教員への就任辞退を求めてきたのである。原告は大学との契約の解除に応じざるを得ず、かねてからの夢であった教授就任の途が閉ざされることとなったのである。
文春記事Aによる原告の損害は、甚大であるというほかない。
(3)文春記事Aに原告へのバッシング誘発の意図があること
ア 朝日新聞に対する被告文春の取材手法
2014年1月26日、被告文春の担当記者から、原告に取材の申し入れがあった。原告は、「朝日新聞の広報部を通して欲しい」と告げたが、その取材には、従前より原告批判を行ってきたチャンネル桜に出演する大高未貴氏が同行していた。大高氏は、チャンネル桜での放送でも「植村記者は、早期退職をして、神戸のお嬢様大学、松蔭女子学院大学の教授になるということで、これだったらほんとうに最後ですね。」と述べており、チャンネル桜での放送を担当する大高氏を同行させた被告文春は、後に掲載する文春記事Aと合わせて、原告に対する批判の誘発と拡大を企図していたものと言わざるを得ない。
イ 神戸松蔭に対する被告文春の取材手法
また、翌27日には、被告文春の編集部から、原告の就職が決まった神戸松蔭女子学院大学へ質問状が送られた。質問状は原告が執筆した本件記事に言及した上で、「…この記事をめぐっては、現在までにさまざまな研究者やメディアによって重大な誤り、あるいは意図的捏造があり、日本の国際イメージを大きく損なったとの指摘が重ねて提起されています。貴大学は採用にあたってこのような事情を考慮されたのでしょうか」等と記載されていた。このような記載は原告を採用した側である松蔭に対して原告は事実をねじ曲げる捏造記者であり、信用できない人物で教員としての適性がないという誤解を植え付け、原告の内定を取り消させようとする強い意欲が読み取れる。
ウ 文春記事A自体の悪性
そして、週刊文春2月6日号に掲載された「“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」(文春記事A)も、そのタイトルからして、慰安婦問題を誠実に議論しようというものではない。原告の記事ではなく、原告が「お嬢様女子大教授に」なったことを攻撃の対象とし、その実現を阻止したいとの意欲を読者に抱かせようとするのがこの記事の目的であるといえる。
また、被告文春は、原告の内定先をあえて「神戸松蔭女子学院大学」と特定して明らかにし、「本人は『ライフワークである日韓関係や慰安婦問題に取り組みたい』と言っているようです」(文春記事A記載⑤)という虚偽の事実をあえて記載している。慰安婦問題に関する記事を作成した原告の批判が目的なのであれば、そもそも内定先の大学名を報道する必要は全くなく、それにもかかわらず、あえて「神戸松蔭女子学院大学」と記載したのは、神戸松蔭女子学院大学に対して電話、手紙及びメール等による抗議が殺到することを期待ないし予測していたからに他ならない。
エ 小括
既述のとおり、原告は、苛烈な植村バッシングの結果、神戸松蔭女子学院大学の教授の職を奪われることとなった。当該結果は、被告文春において当然に予期されたものであるとともに、当該取材手法及び文春記事Aの記載から明らかなとおり、被告文春は、本件記事Aの掲載により、かようなバッシングの誘発と原告の失職という結果を生じさせることを意図していたものと言わざるを得ない。
3 文春記事Bと原告の被害
(1)文春記事Bと原告の被害との間に因果関係が存すること
すでに詳細に検討したとおり、北星学園大学に送られた抗議メール等は、❶文春の記事Aを引用していること、❷当該記事から、原告が「でっち上げ」その他、社会的に批判に値する反社会的行為をしたと考えていること、❸原告を受け入れる大学にも攻撃を向けること、の3点で神戸松陰女子学院に向けられたものと共通するが、さらに、❹原告の家族にも脅迫を行っている点、❺(特に文春記事Bが公表されて以降)北星学園学長の発言に対して激しい攻撃を向けている点で、神戸松陰女子学園に向けられたものと異なる。後2者は、松陰への雇用打ち切りという「成果」を受けて、バッシングが激化かつ陰湿化していることを示すものである。❶❷からすれば、これらの抗議が文春記事をきっかけに行われていることは明白である。とりわけ、学長の発言を取り上げた同時期のメディアは、文春記事Bだけであり、❺を記載している抗議メール等は、全て文春記事Bに基づくものである。
このことは、2015年8月6日以降に抗議メール・電話が激増したことからも明らかである。すなわち、前月7月に19通に過ぎなかった北星宛ての抗議メールは、8月は530件と激増した。また、7月に7件に過ぎなかった抗議電話は、8月には160件に激増しているのである(甲85)。
北星学園大学への攻撃の主たる原因を作ったのは文春記事Bであり、同大学への攻撃の激化と文春記事Bの公表との間には因果関係がある。
(2)被害が甚大であること
文春記事Bがどれほど原告の社会的評価を低下させたかについては、抗議メール等の文面からも明らかである。すなわち、文春記事Bを読んだ人々は、原告がでっち上げその他の反社会的行為をしたと考えて、原告を「従軍慰安婦というウソを広めた人物」(①)、「国賊植村」(⑧)、「メディアという絶大な力をつかって自自宇を捻じ曲げ捏造したのが植村隆」(⑨)、「人間的にも問題ではないでしょうか。こういう人物を教育の現場に置くことが妥当だとお考えでしょうか」(⑮)だとの印象を持っているのである。そして、その印象をメールやファックスに記載して大学側に伝え、原告の社会的評価は、さらに低下していく。
また、抗議メール等は、学長の発言を問題とし「そう考える田村学長さんもガッツリ左翼だな。」(⑧)、「学長の言葉は本当ですか」(⑭)、「なんという認識の甘さでしょうか」(⑯)等と批判した上で、「逃亡者を庇う御学園は共犯である」(⑤)、「こんな人が講師をする大学はどんな酷い所なの」(⑥)、「この大学は危険」(⑦)、「北海道人として、北星学園の存在は恥ずかしい限りです。子供は絶対、北星学園には入学させたくないと、良識ある日本国民は思ってます」(㉔)、「貴校は、特亜の学校か、用はない。廃校しろ」(㉕)等と、攻撃を大学にも向けている。また、時を同じくして「学生を痛めつける」「原告の娘を殺す」という脅迫文も送られ、大学側の負担した警備費用は年間数千万円にものぼったため、原告は、このような大学側の負担も考慮し、韓国ソウルのカトリック大学の客員教授に就任することとなった。原告は、文春記事に基づくバッシングの効果として、もはや国外に避難することを余儀なくされたのである。
文春記事ABによる原告の損害は、あまりに甚大であるというほかない。
(3)文春記事Bに原告へのバッシング誘発の意図があること
ア 文春記事Bが掲載された時期
文春記事Bが掲載されたのは、原告が神戸松陰女子学院大学の内定を取り消された後の2014年8月6日である。被告文春は、文春記事Aを読んだ人々が神戸松陰女子学院大学に多数の抗議を寄せ、その結果、原告の内定が取り消されたことを熟知していたはずである。。
そうすると、自社の記事がそのような効果を生じることを承知の上で、原告がその後も勤務を継続していた北星学園大学においても同じ効果が発生することを強く意欲して、あえて文春記事Bを公開したものと言わざるを得ない。
イ 文春記事B自体の悪性
文春記事Bの内容は、慰安婦問題の歴史を真摯に論じるのではなく、あくまで、原告の雇用を問題にしている。すなわち、冒頭から原告ではなく原告を庇う北星学院大学の田村信一学長の「誤りがあったかも知れませんがそれは彼の長い記者人生のなかでごく一部のこと」とする発言で始まり、記事の中に慰安婦問題について触れた部分はほとんどない。記事は原告が松陰との契約を解約された経緯に触れたのち、「札幌市内にある私立大学の北星学園大学の非常勤講師です」と大学名を明記したうえ、原告が大学で韓国人留学生らを対象に講義をしている事実に触れ、「韓国人留学生に対し、自らの捏造記事を用いて再び"誤った日本の姿"を刷り込んでいたとしたら、とんでもない売国行為だ」という記載で終わっているのである。
被告文春は、文春記事Aの影響で原告が松陰との契約を解除された経緯を知って、あえて原告の現在の職場の大学名を明らかにしているのであるから、文春記事Bによっても同様の事態が発生するであろうことを熟知して、また、そのような事態を強く意欲して文春記事Bを発表したものと断ぜざるを得ない。
ウ 被告文春の北星学園大学への取材手法
被告文春が北星学院大学に送付した質問状には、「植村氏をめぐっては、慰安婦問題の記事をめぐって重大な誤りがあったとの指摘がなされていますが、大学教員としての適性には問題がないとお考えでしょうか。」との記載がなされている。当該記載からは、事実関係の確認という本来あるべき取材手法は全く読み取ることが出来ず、原告が教員としての適性を欠くので解雇ないし雇止めすべきだという、被告文春の意見を押しつけるものに他ならず、原告に対する強烈な害意が存在することは明らかである。
エ さらにバッシングを扇動する記事を掲載していること
被告文芸春秋は、以上のようなバッシングや脅迫の犯罪性を全く問題視することはなく、むしろ、バッシングをさらに扇動している。
すなわち、被告文芸春秋は、2014年10月23日付け週刊文春に「朝日新聞よ、被害者ぶるのはお止めなさい~“OB記者脅迫”を錦の御旗にする姑息」(甲35)というタイトルの記事を掲載した。タイトルだけでも、バッシングを扇動する意図が明らかであるが、記事の中で、被告西岡と対談する訴外櫻井よし子氏は、「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起しているものがあるとすれば、それは朝日や植村氏の姿勢ではないでしょうか」と述べて、家族や職場の被害の責任を原告に転嫁し、さらなるバッシングを扇動している。被告西岡は「脅迫事件とは別に、記者としての捏造の有無を大学は本来きちんと調査する必要がある」と主張しているのである。このように、被告文芸春秋は、原告とその家族の受けた被害を知ってもなお、その被害を嘲笑い、さらなるバッシングを扇動しているのである。
オ 小括
既述のとおり、原告は、神戸松蔭女子学院大学の職を追われて以降も、苛烈な植村バッシングに晒されることとなった。当該結果は、被告文春において当然に予期されたものであるとともに、当該取材手法及び文春記事Bの記載から明らかなとおり、被告文春は、文春記事Bの掲載により、更なる植村バッシングの誘発を意図していたものと言わざるを得ない。
4 被告文春のこれまでの名誉毀損行為とその被害
原告第2準備書面において述べたとおり、被告文春の発行する週刊文春においては、正確な裏付けなどがない状態においても、特定の個人等を「疑惑」という形で攻撃する手法をとり、報道の対象とされた人物の名誉を毀損し続けてきた。一例として、週刊文春による、大分県・聖嶽洞穴遺跡における石器捏造疑惑報道がある。これは、2001年、週刊文春が、大分県の聖嶽洞穴遺跡から採取された石器が捏造であり、同遺跡の発掘調査の責任者であった賀川光夫別府大学名誉教授(以下、「賀川名誉教授」という。)が捏造に関与した疑いがあると報道したことに対し、賀川名誉教授が「死をもって報道に抗議する。」との遺書を残して自殺した事件である(甲92・日本考古学協会のホームページ「聖嶽洞穴遺跡問題について」)。
その後の学会の調査により、「捏造の可能性は低い。」との学術的結論が得られ、名誉棄損の民事訴訟では最高裁判決で遺族の勝訴が確定し、週刊文春は謝罪文を掲載したが、賀川名誉教授がそのような正しい結論を待ち得ずに自ら生命を断つ決断に追い込まれた
このように、被告文春は、個人攻撃の形での記事掲載により苛烈なバッシングが生じるとともに、被害者らに生じた損害について自身が責任を負いうるということを、身をもって知っていたのであり、本件記事A及びBの掲載により、原告に対し、バッシングが及ぶことを当然に認識ないし許容していたことは明らかである。
それどころか、記事Aにおいては原告の教授就任予定の大学である神戸松蔭女子学院大学という名称まで記載し、記事Bにおいては「札幌市内にある私立大学の北星学園大学の非常勤講師です」と大学名を明記していることからすれば、被告文春は、抗議の対象を明示することで、これらの大学への抗議・バッシングを誘発させることを企図していたものであるといわざるを得ない。
5 結論
以上より、文春記事A及びBにより、苛烈な植村バッシングが引き起こされたこと、及び被告文春が、かようなバッシングが生じることを認識・予期したうえで、各記事掲載に至ったことは明らかであり、当該記事により現実に原告の名誉及び生活の平穏が脅かされているのである。
第4 本準備書面のまとめ
1 原告の平穏な生活の侵害
原告は、被告らの行為により、名誉権やプライバシー権、名誉感情以外にも、「平穏な生活を営む法的利益」を侵害されていることが明らかである。とりわけ、職場に脅迫状を送られ、職場関係者や家族の命が狙われるに 至ったことにより、原告は、日本社会で生存することそれ自体が不可能になり、海外に脱出せざるを得なかったのであるから、本件における損害の算定にはこの点を十分に考慮すべきである。
2 被告文藝春秋の行為の違法性
本件で文春記事A及びBは原告の名誉権やプライバシー権、名誉感情を侵害する違法なものであるが、さらに、原告の「平穏な生活を営む法的利益」を侵害する点でも違法である。被告文藝春秋は、原告が日本国内で平穏な生活を送る利益を積極的に侵害しようとする「害意」を有して本件記事を掲載しており、その違法性は顕著である。
3 被告文藝春秋の行為との因果関係
くり返し述べるとおり、大学に寄せられた抗議の内容、時期、量などを総合的にみれば、原告の「平穏な生活を営む法的利益」を侵害する植村バッシングを引き起こしたのは文春記事Aであり、その激化をもたらしたのは文春記事Bである。被告らの行為と原告の受けた損害との間には、明らかな因果関係がある。
4 原告の受けた損害
文春各記事によって引き起こされたバッシング内容の激しさ(殺害を予告するものが多数ある)、被害が職場や家族等に及んでいること、大学教授の夢を捨てざるを得なくなったこと等を総合考慮すれば、以下の請求は妥当である。
文春記事Aに関するもの
名誉権、プライバシー権、名誉感情侵害について 500万円
平穏な生活を営む法的利益の侵害について 500万円
文春記事Bに関するもの
名誉権、プライバシー権、名誉感情侵害について 500万円
平穏な生活を営む法的利益の侵害について 500万円
5 結論
よって、原告の請求は速やかに認められるべきである。
以上
凡例▼人名、企業・組織・団体名はすべて原文の通り実名としている▼敬称は一部で省略した▼PDF文書で個人の住所、年齢がわかる個所はマスキング処理をした▼引用文書の書式は編集の都合上、変更してある▼年号は西暦、数字は洋数字を原則としている▼重要な記事はPARTをまたいであえて重複収録している▼引用文書以外の記事は「植村裁判を支える市民の会ブログ」を基にしている
updated: 2021年8月25日
updated: 2021年10月18日